東野圭吾「魔女の胎動」
鍼灸師の工藤ナユタは、仕事先で偶然ある若い女性と出会います。
彼女の名前は羽原円華、脳医学の権威を父に持つ彼女は、ある不思議な力を持っていました。
彼女には風の向きや方向、気流の流れなどをかなり正確に読み取ることができる、特殊な能力があります。
ナユタは自身の受け持つ患者やその関係者を通じて彼女と出会い、そして彼女の特殊な能力を何度も目の当たりにします。
彼女の能力は引退寸前のスキージャンパーを、スランプに陥った野球選手を、そして息子の事故は自分のせいだと責め続ける父親を救っていきます。
とは言っても彼女はけして天使のような優しげな人物ではなく、初対面の人間にもハッキリと物を言うような勝ち気な女性です。
最初は半信半疑だったナユタも何度も彼女の能力を目の当たりにするうちに、彼女のペースに巻き込まれていきます。
私が特に印象に残ったのは「どの道で迷っていようとも」です。マイノリティの問題を扱うと共に、ある人物の死の謎についても解明していきます。
ナユタの意外な過去についても明らかにされていきます。
事態が二転三転し、最後には意外な事実が明かされ、まさにミステリの醍醐味が楽しめる作品でもあります。
マイノリティの問題は東野氏の作品ではたびたび取り上げられています。
前作「ラプラスの魔女」の続編、というよりは前日譚のような作品です。
大変面白く、あっという間に読んでしまいました。「ラプラスの魔女」を読んでいなくても、十分に楽しめる内容となっています。
評価⭐️⭐️⭐️⭐️