真梨幸子「クロク、ヌレ!」
ジョー·コモリという世界的作家の一人語りからこの作品は始まります。
〡章からは岩代彰子という女性が登場します。
彰子は一緒に暮らす母親の突然の思い付きにより、若くして亡くなった自身の叔父であり無名の画家であった岩代彰夫の生前に残した絵画を収集するはめになります。
ところがある偶然から彰夫をジョー・コモリの接点を見つけます。
ふたりの確執や不可解な死に方、その関係を利用し利益を得ようとする女流ライターや企業の思惑も絡んできて、事態は複雑になっていきます。
彰子の叔父の岩代彰夫はかなりエキセントリックな人物だったようです。
アルバイトなどは一切せず、彰子の父である弟からの援助により生活していたようで、それが原因で彰子の両親はたびたび喧嘩をし、彰子の母は彰夫のことを毛嫌いしていました。
また自分の目玉をくり抜き、それを友人に送りつけるなどかなりの異常性が見られます。
岩代彰夫の自殺の謎、ジョー・コモリの死は本当に自殺だったのか、殺されたとしたら一体誰が殺したのか、という謎がこの作品の重要なポイントとなっています。
岩代影夫、ジョー・コモリの死の真相、そして物語は予想外の展開を迎えます。いわゆる「大どんでん返し」です。
この意外な結末については賛否両論あると思いますが、私は最後まで楽しんで読みました。
興味を持った方はぜひご一読ください。
真梨さんの作品は「イヤミス」という言葉だけが強調されがちですが、私はそのミステリとしての面白さにいつも引き込まれます。
いつも最後にあっと驚くような仕掛けが用意されていて、ページを繰る手が止まらなくなります。
ミステリ好きの方にも十分楽しめる作品となっています。
評価☆☆☆