柚木麻子「デートクレンジング」


結婚し義母の営む喫茶店を手伝う佐和子と、アイドルグループのマネージャーを務めている実花、タイプも性格も違う二人でしたが、学生時代から続く友情は30代半ばになった今でも続いています。

しかし、実花の担当していたアイドルグループ「デートクレンジング」の解散を機に、二人の関係には変化が訪れます。

何かに追いたてられるように婚活を始めた実花、穏やか夫婦生活を送りながらも妊活を続ける佐和子。


焦るように婚活を進めていく実花に戸惑いを覚える中、佐和子の身にもある大きな変化が訪れます。

二人の関係の変化と平行して、解散した「デートクレンジング」のその後や実花の婚活仲間の芝田など、それぞれに心に揺らぎを持った人々の姿が描かれています。

また女性も男性もある年齢に達したら結婚しなければならない、そして妊活をして子供を産み、保活をして…という世の中の一連の流れに乗らなければならない、でもどうしても乗り切れないという各々の戸惑いと葛藤も作品の中で描かれています。

北澤平祐氏のイラストが可愛らしく一見ポップな内容の作品かと思いきや、なかなか重い内容も作品中に含まれています。

「女の友情」を描かせたら柚木さんの右に出る人はいない、と思われるほどリアルに、そして生々しいく女同士を描く方なのですが、この作品もやはり例外ではありません。

ナイルパーチの女子会」では、ある意味とても「怖い」友情を描き、柚木さんの代表作とも言える「BUTTER」では、これを友情というのかどうかは分かりませんが、ある意味友情とよりも濃い女同士の壮絶なやり取りが描かれています。

それは実花と佐和子のやり取りや実花と芝田のやり取りなどによく現れています。

また作品中ではすでに故人となっていますが、生涯独身を通したある女性も作品の中で重要な役割を担っています。

個人的には佐和子の義母がとても好きです。

女性の強さだけでなく佐和子へのさりげない気遣いや凛とした態度など、年齢を重ねたらこういう女性になりたいな、という理想の女性です。

結婚している方にも独身の方にも、また人生の帰路に立たされている女性に読んで欲しい一冊です。