真梨幸子「アルテーミスの采配」
第一部の「第一の采配」では、名賀尻龍彦という人物の視点で作品が描かれています。
フリーライターの名賀尻龍彦は、元AV監督で今は売れっ子マルチタレントとして活躍している西園寺ミヤビからのメールをきっかけとして、彼女の仕事を手伝うことになります。
彼女が企画した「アルテーミスの采配(仮称)」、AV女優達にインタビューしそれをまとめ書籍として出版するという計画に、名賀尻はインタビュアー兼ライターとして参加することになります。
名賀尻はかつて井草明日香というアイドルからAV女優に転向した女性を取材し、ゴーストライターとして「アスカという他人」という本を上梓していました。
この本の売り上げは120万部という異例のヒットとなり、ライターとしての名賀尻の名は業界に知られることとなります。
西園寺が名賀尻に声をかけたのは、その事がきっかけであるようです。
仕事を引き受け5人の現役、または引退した元AV女優に取材を重ねていく名賀尻でしたが、最初にインタビューした東条ゆなの不可解な死を境に、異変が起こっていきます。
名賀尻がインタビューした女性達が次々に失踪し、死んででいくのです。
身の危険を感じた名賀尻は、ある人物の助言により身を隠しますが…
第二部の「第二の采配」では、語り手が出版社で派遣社員として働く、倉本渚という人物に変わり、名賀尻龍彦の書いた原稿を読む、という形で物語が進んでいきます。
しかし、この原稿をきっかけとして、彼女の周辺では不可解な事が起こります。
原稿が謎の人物により持ち去られたり、「アルテーミスの采配」の新たな事実が判明したり…
いやが上ににも、彼女自身も「事件」に巻き込まれていきます。
真梨さんの作品はいつも伏線が絶妙で、いつも気持ちよく騙されてしまいます。
この作品も同様で、「今回こそ騙されないぞ!」と思うのですが、やっぱり最後にどんでん返しがあり、見事に騙されてしまいます。
今最も勢いがある作家さんの一人だと思います。