獅子文六「胡椒息子」

主人公は牟礼家の次男坊でいたずら好きの12歳の昌二郎です。

 

牟礼家は社交界でも顔が効く大変裕福な家柄ですが、昌二郎の父親には外に愛人がおり家の事には全く無関心で寄り付きません。

 

母はそんな夫への復讐心もありやはり外出ばかりしており、家の中の事には全く関心がなく、3人の子供達のことも女中達に任せきりでやはり関心がありません。

 

昌二郎には兄である昌太郎と姉の加津美がいますが、二人ともどちらかというと意地が悪く、何かと理由をつけては昌二郎をないがしろにします。

 

そんな昌二郎の唯一の味方は、元女中頭のお民婆やです。

お民婆やは年齢的な理由で一度は牟礼家を退きますが、昌二郎のたっての希望で牟礼家に戻ってきます。

 

そんな複雑な家庭に育った昌二郎ですが、多少いたずら好きではあるものの、気は優しくて曲がった事が嫌いな正義感の強い子供です。

 

お民婆やもそんな昌二郎が不憫でありながら、本当の息子よりも強い愛情を昌二郎に注いでいます。

 

そんな中でも牟礼家は何とか成り立っていましたが、昌太郎の婚約者のこと、また加津美の恋愛沙汰などで徐々に暗雲が立ち込めてきます。

 

そこに昌二郎の出生の秘密も追い打ちをかけ、兄妹二人はさらに昌二郎につらく当たるようになります。

 

また理不尽な母の行動により、昌二郎はたった一人の味方であるお民婆やとも引き離されてしまいます。

 

そんなある日決定的な事件が起こり、昌二郎はついに感化院(今でいう児童支援施設)に送られる事態となってしまいます。

 

昌二郎の両親をはじめとする大人達の身勝手さ、昌太郎や加津美の意地の悪さなどには本当に腹が立ちます。

 

しかしその分、昌二郎とお民婆やの微笑ましいやりとりやお民婆やの息子夫婦の姿には心を救われる思いがします。

 

昌二郎は感化院に送られてしまいますが、そこで昌二郎は忘れられない経験をし、初めての友を得ます。

 

最後までどうなるかハラハラしますが、昌二郎の正直でまっすぐな心に最後まで救われる作品となっています。

 

獅子文六氏の作品はどれも面白く興味深いのでおすすめです。

 

評価⭐️⭐️⭐️