獅子文六「七時間半」


七時間半 (ちくま文庫)

まだ列車に食堂車があり、新幹線が開通していなかった時代が舞台となっています。

東京‐大阪間が七時間半(!!)かかっていた頃、特急列車には給仕係の女性や女性乗務員、食堂車のコックなどさまざま人達が乗り合わせていました。

「ちどり」というこの作品の舞台となる列車にも、給仕係の藤倉サヨ子や食堂車コックの矢板喜一、そして美人乗務員今出川有女子など、それぞれに悩みを抱えた個性的な面々が乗車しています。

また乗客も典型的な大阪商人である岸和田社長や大学院生の甲賀恭男とその母親、さらには総理大臣とさらに輪をかけて濃い面子が揃っています。

またまたさらにこの列車にまつわる黒い噂も駆け巡り、さらにそれを裏付けるような、あやしい人々も乗車していて、、

ジャンルでいうと、「痛快ドタバタラブコメディ」というのでしょうか。とにかく次々に色んな事が起こり目を離せず、あっという間に読み終えました。

もちろんラブコメの部分だけでなく、給仕係と乗務員のライバル関係であったり、コック同士の複雑な想いがあったり、、人間関係が複雑で読みごたえがあります。

この作品を読むと、食堂車のある列車に乗りたくなると思います!というか食堂車の料理が食べたくなります。(TT)

今では想像しかできませんが、せめてこの作品を読んでいる間は、その気分を味わっていただきたいなと思います。
評価⭐️⭐️⭐️⭐️