伊吹有喜「 なでしこ物語 」


([い]4-3)なでし子物語 (ポプラ文庫)

母親の失踪により祖父の元に引き取られた耀子は、遠州峰生の名家である遠藤家に引き取られます。転校した耀子はいじめに遭い、やがて学校に行けなくなります。耀子は遠藤家の当主の息子であり、自身もいじめにあっている立海とともに、家庭教師から勉強の他人生についての大切なことを学ぶことになります。実は立海自身も耀子と同じようにいじめにあっていて母親もいず、かなり複雑な境遇に置かれているようです。
おあんさんと呼ばれる女主人の照子、また立海や周りの人々との出逢いにより、耀子は少しづつ変わっていきます。

自立、顔を上げて生きること。自律、美しく生きること。

この言葉は耀子が遠藤家の家庭教師から最初に教えられた言葉です。とても美しく、まっすぐな言葉で最後まで印象に残りました。耀子にとっても人生を変える大切な言葉となったようです。耀子が家庭教師や立海とともに遠藤家で過ごしたのはほんの数ヶ月です。やがて二人には突然別れが訪れます。でもこの別れが必ず明るい未来に通じていると思いたくなる、人の心に真摯に向き合った作品だと思います。
評価⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️