小川糸「にじいろガーデン」


にじいろガーデン (集英社文庫)

この物語は二つの家族を軸にして始まります。夫との関係に悩む主婦の泉は、ある日たまたま出会った女子高生の飛び込み自殺を思い止まらせます。最初は相手の事情を聞いていたはずなのですが、知らず知らずのうちに自らの身の上話をしてしまいます。年代も境遇も全く違う二人が出会い、やがて魅かれ合い、お互いかけがえのない存在だと認識し始めます。それぞれ別々の家族をもっていた二人は、やがてお互いがひとつになることを決意します。

この作品は家族というもののあり方を描くと共にジェンダーという問題も扱っています。周りの反対を押しきって二人は家族となり、子供達とともに理想の地を求めて山里へ移り住みますが、そこでもやはり偏見や困難に見舞われます。それでも前向きに明るく生きようとする二人を見ていると、何だかこちらまで元気づけられるような気がしてきます。

作品の終盤にはとても困難で悲しい運命が二人を待ち受けています。この作品のいい所はそれでも話がけして暗くならない所です。家族のあり方は人それぞれであり、幸せの形もまた違うのだなと改めて考えさせられる作品です
評価⭐️⭐️⭐️⭐️