柚木麻子「ナイルパーチの女子会」


ナイルパーチの女子会

題名に「女子会」と付いているので、最初は女同士の友情の話かな、と思いましたがそんなに甘やかな話ではありませんでした。とにかく、ただひたすらに怖い作品でした。

この作品は志村栄利子と丸尾翔子という二人の女性の交流を描いた作品です。二人の出会いは翔子のアップしているブログでした。専業主婦である翔子は主婦ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」を毎日アップしていて、その翔子のどちらかと言えば緩い感じの日常を描いたブログは、書籍化の話が具体化するほどの人気でした。丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマンである栄利子は元々そのブログのファンでしたが、そんな二人が偶然にカフェ出会う所から物語は動き出します。

全く違う環境でそれぞれ生活を送っていた二人ですが、同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあって、急速に親しくなります。そこから理想的な関係 が始まると思えた矢先、あるささいなことがきっかけで、物語は思わね方向に進んでいきます。

最初はとても良い感じなんですが、本当にささいなことがきっかけで、あっさりと二人の関係は壊れていきます。しかも
栄利子が翔子のある秘密を握ったことから、冒頭に書いたように話はとても怖い方向に進んでいきます。

美人でバリバリ仕事をする栄利子は、一見すると完璧に近い感じの女性なのですが、胸の内には実は歪んだコンプレックスを抱えています。一方の翔子も明るくあっけらかんとした性格のようですが、
実は家族を捨て出て行った母親と、実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を 抱えています。
 読み進めていると二人の友情がこわれたのは圧倒的に栄利子に非があるように思われますが、翔子の心の歪んだ部分が、翔子の心を引き寄せたようにも感じました。

あまりネタバレしたくないのですが、、この作品を読んでいるとストーカーの心理のようなものがよくわかります。周りからはどんなに異常に見える行動などにも、本人にとっては正当な論理というか理屈があるんですね。だからこそその行動が怖いとも言えるのですが、、

もちろんこの作品は怖いだけの作品ではありません。最後にはそれぞれの道でそれぞれが出した答えが描かれています。けしてハッピーエンド、というわけではありません。今抱えているさまざま困難に立ち向かおうとしている姿には、やはり女性としての強さを感じました。
評価⭐️⭐️⭐️⭐️