群ようこ「うちのご近所さん」
主人公はマサミという女性で、彼女が少女期、学生、社会人に関わりを持った近所に住んでいる人達を群さんらしい視点でユーモラスに、そして時には厳しい視線で描いています。
いつもホウキを持ち近所を掃除しながらさまざまな噂に聞き耳を立てる、ちょっとお節介なおばさん、あまり関わりはないけれど、家では何かと話題となる幼なじみ、近所に住む白塗りの謎の資産家のおばさんなど、ああ、こういう人って必ず近所に一人はいるんだよね、という人々が次々に登場します。
短編集なのでとても読み進めやすいです。
「れんげ草シリーズ」や「パンとスープと猫日和シリーズ」もそうですが、群さんの作品は一見表紙を見るとほのぼの系の作品のようですが、実はそれだけではありません。
もちろん読んでいて思わず笑ってしまったり、やさしい気持ちになったりはしますが、そこには常に群さんがいつも世の中を鋭い視線で見つめているのが感じられます。
特に母と子の関係について描かれていることは的を射ている部分が多く、親子関係の一筋縄ではいかないことへの複雑な想いが感じられます。
この作品ではマサミのおおらかな母親とマイペースの父親が描かれていて、40代になりさまざまな想いを抱えるマサミの心情がある種ユーモラスに描かれています。
私が特に印象に残ったのは「大家のバンバサさん」という話です。
この話には熱心に宗教の勧誘をする女性が登場します。
マサミは両親からの助言もあり、あまり関わらないようにしていますが、子供の頃や学生になってから、さらに社会人になってからも不本意ながらこの女性と関わることになってしまいます。
宗教に対してあれこれ、というよりは、自分が良いと思ったものをどこまでも人に押し付けようとする人への批判と言うか、悲哀のようなものを感じました。
宗教の表現の仕方がとても面白くて群さんらしいなと思いました。
評価⭐️⭐️⭐️