獅子文六「悦ちゃん」
悦ちゃん (ちくま文庫)
妻に先立たれた作詞家の碌さんこと柳碌太郎の娘の悦ちゃんは、とてもしっかり者の女の子です。
父娘で慎ましくも仲むつまじく暮らしていた矢先、碌さんに再婚話が持ち上がります。ところが悦ちゃんはその再婚には大反対!しかもその相手の策略で、無理やり寄宿舎に入れられそうになり、、
でも悦ちゃんはそんなことには負けず、碌さんの再婚相手にふさわしいと決めた相手に、たった一人で会いに行きます。
読んでいてとにかく悦ちゃんの行動力に圧倒されます。
あとは碌さんのダメ人間さにとにかく呆れます(^_^;)
悦ちゃんの嫌いな再婚相手候補にデレデレだし、実はその結婚話そのものにも、大人達の身勝手な策略があったりします
その辺りは読んでいて本当に腹が立ったし、なんだかイライラしてしまいました。
悦ちゃんひとりを残して失踪してしまうなんて考えられないですよね。
鏡子さんがいたから良かったようなものの、悦ちゃんはどれだけ寂しい思いをしたことでしょう。(TT)
碌さんがいなくなり、鏡子さんと二人だけになった悦ちゃんですが、生活の糧を得ようと色々なことをするのですが、そのバイタリティというか前向きさがとにかくすごい!
もっとすごいと思うのは、父子家庭、父親の失踪などを小説で描いたらきっと誰もが暗い話を描いてしまうと思うのに、それを最後まで明るく、ユーモラスに描いてしまう獅子文六の筆力の凄さです。
言葉が足りなくてうまく言えませんが、本当に日本に二人といない、稀有な作家さんだと思います。
ネタバレになってしまいますが、、私が一番好きなのは碌さんと鏡子さんの父親とのやり取りの場面です。
なんか二人の噛み合わなさが絶妙というか(^_^;)
気になった方はぜひ読んで見てくださいね
評価⭐️⭐️⭐️⭐️