森沢明夫「失恋バスは謎だらけ」


失恋バスは謎だらけ

この作品の舞台はさる旅行会社が企画した、失恋バスツアーです。主人公はこの旅行会社の社員であり、この企画の発案者である天草龍太郎という人物です。実は彼は今、失恋したばかり、しかも会社が倒産危機にあるというダブルパンチ状態にあります。実は失恋の相手は カウンセラーとして同じバスに乗っています。

このツアーの趣旨は、失恋した参加者に、鄙びた旅館、わびしい粗食、 
うら寂しい観光地を提供してどん底まで落ち込んでもらい 、あとは上がるだけ、グイグイ元気になってもらいましょうというものなのですが、今の彼の状態を考えると、もしかしたら、彼自身が一番辛いのでは、、と思ってしまいます。(^_^;) 

しかも今回の参加者はとても個性的な人ばかりで、やたらに元気な金髪ハーフ美女、 自称パンクロッカー、巨漢の僧侶、、謎の中国人、文学少女風のお嬢様などなど、、予想通り、さまざまなトラブルに巻き込まれてしまいます。
しかしこの人達の中には、実は失恋以上に辛い事情を抱えた人もいるようです。

もちろん、ツアーの進行と同時に龍太郎と失恋相手であるカウンセラーの小雪との関係も明かされていきます。二人のそれぞれの家族についても触れられていて、それぞれの家族というものについての考え方の違いは、とても興味深いものがあります。

この作品は少しミステリーっぽい要素があり、さまざまな謎が各所にちりばめられています。ツアーが進むにつれて、色々な謎が明かされていきますが、私が一番感じたのは、、

「龍太郎、鈍感過ぎる!!」です。(^_^;)

物語を進める上では仕方がないのかもしれないのですが、、もう少し何とかならないかなあ、、と思ってしまいます。バスツアーの人達はほぼ全員気づいているのに(^_^;)とても誠実でいい人なのですが、鈍いというか残念というか、、
こんな人物ですから最後の最後までハラハラさせられ、そして楽しめる作品になっています(^^)

森沢明夫さんの作品が好きです。ちなみに一番最初に読んだのは「ヒカルの卵」でした。どの作品も読んだ後にとても温かい気持ちになります。
人生はどんなことがあっても、またいつからでもやり直せる、いつもそんな気持ちにさせてくれます。
評価⭐️⭐️⭐️