朱川湊人「月蝕楽園」

それぞれの話に「みつばち」「金魚」「蜥蜴」など生き物の名前がついた短編集となっています。「恋愛小説」と銘打っていますが、そこはやはり朱川氏の作品ですのでやはり一筋縄ではいきません。

言ってみれば「究極の恋愛小説」とでも言えば良いでしょうか。

 

「みつばち心中」はある企業の女性上司が入院している部下を見舞うとこれから話が始まります。実は40代で独身の女性上司はある秘密を抱えています。

 

私はこの作品は「純愛小説」であると感じました。

 

「噛む金魚」は、子供はいませんが理想的に見える夫婦のある暗部を描いた作品です。

 

私はこの作品集の中でこの作品が一番怖いと感じました。特に「噛む金魚」といい題名の意味がわかった時は鳥肌が立ちました。

 

ホラー的な怖さというよりは、現実的な恐怖を感じました。

 

まるで自分自身も水槽の中に閉じ込められているような息苦しさを感じました。

 

「夢見る蜥蜴」は蜥蜴の「サラ」と飼い主の「あの人」のやり取りが切ない作品です。

 

どの作品も「恋愛」というにはあまりにも過酷で悲しい状況ですが、いかにも朱川氏らしい作品ばかりだなと感じました。

 

評価☆☆