源氏鶏太「家庭の事情」


家庭の事情 (ちくま文庫)

妻に先立たれ、5人の娘たちを男手ひとつで育ててきた三沢平太郎は、55歳で定年退職を迎えます。

退職金と貯金をあわせた300万円を、平太郎は結婚資金と称し50万円づつ娘達に与えます。

同じ様に育てたはずなのに、娘達はまったく違う個性を持ち、50万円の使い道も実にさまざまです。

自分の店を持とうとす者、恋人に貸してしまう者、株式投資する者、会社で高利貸しを始める者など…

実は平太郎自身も、娘達には言えない事情を抱えているようです

そこに娘の結婚話や平太郎の再婚話も絡んできて、話はますます複雑になってきます。

平太郎が女性に振り回される姿も滑稽で、そこから起こるさまざまな出来事をユーモラスに描いています。


獅子文六氏の作品を読んだ影響でこの作品を読みました。おそらくこの作品の舞台は昭和30年代から40年代あたりかと思われます。

50万円と言えば今でも大金ですが、この当時は今よりさらに価値があったと思われます。

そんな大金を急に手にすると、やはり人間は右往左往してしまいますね。
その姿がまた人間味があり面白かったりします。

5人の娘達は個性的ですがとても仲が良くそれぞれの魅力があります。

そんな娘達の成長が嬉しくもあり、また一抹のさびしさを覚える父親である平太郎の喜怒哀楽振りもも見どころのひとつとなっています。

評価⭐️⭐️⭐️⭐️